看護師としてキャリアアップを考えた時に選択肢の1つとして上がってくるのが「専門看護師」です。
看護のスペシャリストと呼ばれる専門看護師とは、どのような看護師なのでしょうか?
良く聞く「認定看護師」との違いは何なのでしょうか?
ここでは、専門看護師についてわかりやすく解説します。
専門看護師とは?
専門看護師(Certified Nurse Specialist , 略称:CNS)とは、日本看護協会の専門看護師認定試験に合格し、より困難で複雑な健康問題を抱えた人やその家族、地域などに対して、「より専門的で質の高い看護を提供するための知識や技術を備え、特定の専門看護分野において卓越した看護を実践できる」看護師をいいます。
専門看護師の働き方や仕事内容
専門看護師は、一般的には専門看護分野に関連のある部署に配属されます。
病棟や一般外来、専門外来、病院の教育研修部門など複数の部署やチームにまたがって活躍します。
専門看護師の目的とは?
専門看護師は、医療の高度化・専門化に伴い、より専門的な看護師や看護師をマネジメントする人材を育成しようという考えに基づいて作られた資格です。
日本看護協会の公式サイトでは、下記のように記されています。
専門看護師制度
専門看護師制度は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し、併せて看護学の向上をはかることを目的としています。
(出典:日本看護協会)
専門看護師の6つの役割とは?
専門看護師は、それぞれの専門看護分野で6つの役割を担います。
- 実践
個人・家族または集団に対して卓越した看護を実践
- 相談
看護職等に対してコンサルテーション
- 調整
必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉チームへのコーディネーション
- 倫理調整
個人・家族・集団の権利を守るために倫理的問題や葛藤の解決
- 教育
看護職者に対する専門的分野の教育
- 研究
専門知識や技術開発をはかるための実践の場における研究活動
専門看護師には、「広い視点からコーディネートする能力」、「エビデンスに基づいたケアを現場で実践し、教育や研究に生かす」といった活動が求められます。
専門看護師にはどんな種類がある?
専門看護師には13の「専門看護分野」があります。
各分野について詳しく見てみましょう。
分野 | 特徴 | 登録者数(2021年3月) |
がん看護 | がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に質の高い看護を提供。 | 948人 |
精神看護 | 精神疾患患者に高い水準の看護を提供。 一般病院でも「リエゾン精神看護」の役割を提供。 | 365人 |
地域看護 | 産業看護、学校看護、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域で高い水準の看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献。 | 27人 |
老人看護 | 認知症や嚥下障害などの高齢者の生活の質を向上させるために高い水準の看護を提供。 | 207人 |
小児看護 | 子どもたちの療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携し、高い水準の看護を提供。 | 280人 |
母性看護 | 女性と母子に対する専門看護を実施。 | 87人 |
慢性疾患看護 | 生活習慣病の予防、慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する高い水準の看護を提供。 | 231人 |
急性・重症患者看護 | 緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供。 患者・家族の支援、医療スタッフ間の調整。 | 315人 |
感染症看護 | 感染予防と発生時の適切な対応、感染症の患者に高い水準の看護を提供。 | 90人 |
家族看護 | 患者の回復を促進するために家族を支援。 家族本来のセルフケア能力を高められるよう身体的・精神的・社会的に支援。 | 74人 |
在宅看護 | 在宅で療養する患者・家族の生活を支援。 新たなケアシステムの構築、既存のサービスとの連携。 | 87人 |
遺伝看護 | 対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定や療養生活を支援。 世代を超えて必要な医療やケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献。 | 11人 |
災害看護 | 災害の特性を踏まえて、限られた資源の中、メンタルヘルスを含む適切な看護を提供。 減災・防災体制の構築、災害看護の発展に貢献。 | 22人 |
出典:専門看護師(日本看護協会)
専門看護師になるためには?
専門看護師になるためには、看護系の大学院に2年以上通わなければなりません。
看護師免許取得後、看護系大学の大学院(修士課程)で専門看護師教育課程を修了し、なおかつ実務研修が5年以上(そのうち3年以上は専門看護分野の実務研修)あることが条件とされています。
上記の条件をクリアした上で、認定審査(書類審査・筆記試験)を受け、専門看護師認定証の交付・登録となります。
専門看護師の資格は5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究実績などの書類審査)しなければなりません。
専門看護師と認定看護師の違いは?
看護のスペシャリストと呼ばれる専門看護師と認定看護師の違いは何なのでしょうか?
違いについて詳しく見てみましょう。
名称 | 専門看護師 (CNS:Certified Nurse Specialist) | 認定看護師 (CN:Certified Nurse) |
役割 | 実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 ※調整役や教育、研究も担うのが特徴 | 実践・指導・相談 |
分野 | 13の専門看護分野 がん看護/精神看護/地域看護/老人看護/小児看護/母性看護/慢性疾患看護/急性・重症患者看護/感染症看護/家族支援/在宅看護/遺伝看護/災害看護 | 19の認定看護分野 感染管理/がん放射線療法看護/がん薬物療法看護/緩和ケア/クリティカルケア/呼吸器疾患看護/在宅ケア/手術看護/小児プライマリケア/新生児集中ケア/心不全看護/腎不全看護/生殖看護/摂食嚥下障害看護/糖尿病看護/乳がん看護/認知症看護/脳卒中看護/皮膚・排泄ケア 注) |
人数 | 2,744人(2021年3月現在) | 21,971人(2021年3月現在) |
経験 | 実務研修5年以上(そのうち3年以上は専門看護分野) | 実務研修5年以上(そのうち3年以上は認定看護分野) |
教育 | 看護系大学院の修士課程で所定の単位を取得(2年~) | 認定看護師教育機関で所定のカリキュラムを修了(8カ月~1年) |
費用 | 約200万円(おおよその目安) | 約100万円((おおよその目安) |
認定審査合格率 | 約78% | 約90% |
注)認定看護師の制度は2020年度から、特定行為研修が組み込まれた新制度に移行し、従来の21分野から19分野へ再編されています。
従来の認定教育は2026年度に終了予定です。
専門看護師は、看護技術の実践や調整など現場での活動以外にも教育や研究などの役割も担い、対象とする分野全般において活躍が期待される資格、いわゆる「看護のプロ」であることがわかります。
それに対して、認定看護師は現場での実践に重きが置かれています。
対象とする分野で熟練した看護技術や知識を生かした活躍が期待される資格、いわゆる「現場のプロ」であることがわかります。
専門看護師に向いている人の5つの特徴
- 対象分野の知識・技術をより深く習得したい人
- 現場での実践のみではなく、質の高いケア提供につながる仕組みづくりをしたい人
- 対象分野で教育や研究に力を入れ、看護の質向上に貢献したい人
- 看護系大学に在籍している、もしくは卒業した人
- 専門看護師になるための費用・時間・労力を惜しまない人
まとめ
専門看護師になるためには看護師免許取得後、看護系大学院修士課程を修了し、5年以上の実務研修、認定審査と資格取得までの道のりは時間も費用も労力も必要であり、そう簡単ではないでしょう。
しかし、医療機関によって専門看護師資格取得後は昇格や昇給、手当などが支給される職場もあり、活躍の場が広がることは間違いありません。
自分自身がどのような看護師になりたいのか、キャリアプランをしっかり考えた上で、目指したい専門看護分野の資格取得にぜひ、挑戦してみてくださいね。