小児科リハビリ病棟から成人混合病棟に転職したAさん
Aさんは、もともと小児科の病棟が好きでそこで長く務めたいという気持ちがありました。
また、Aさんは結婚してバリバリ仕事をこなすキャリアアップではなく、仕事と家庭をうまくこなして両立させていきたいという気持ちがありました。
Aさんは、学校を卒業してから急性期(病気になりはじめた時期)の小児科で働いていたのですが、当時結婚を考えていた人と同棲していたこともあり、小児科でもゆったりと働ける小児科のリハビリ病棟に移ることにしました。
急性期の看護師には女性が多く、結婚を考えてAさんのような異動をする人も多くいましたし、急性期病棟では出産したあとも続けて仕事ができないのではないかとAさんは考えました。
新しく配属された病棟では、30~40代の看護師が多く、職場の雰囲気も良かったし、給料の面でもそれなりに良かったそうです。
また、その病棟では回復期リハビリ専門で、スキルアップしていくという雰囲気はありませんでした。
Aさんは新しい職場で順調に仕事も慣れてきた頃、ある事情から結婚を考えていた人と別れてしまいました。
それまで、小児科でずっと働いていたいという思いがありましたが、結婚の話がなくなってからは、このままでいいのか?という気持ちが強くなったそうです。
小児科は好きだったのですが、小児科だけの経験だと採血や点滴といったスキルが高まる機会が少なかったからです。
小児科にいるとき、看護師として視野が狭いのではないかと感じ、劣等感のようなものもあったそうです。
Aさんはそんな思いもあって、小児科ではなく成人病棟で勉強しようと決意し、転職を考えるようになりました。
とはいえ、Aさんは彼氏と別れてからすぐに転職できたわけではなく、半年ほどはそれまでどおり同じ職場で働いていました。
しかし、半年を過ぎた頃から、朝になると腹痛が起きたり風邪をひきやすくなったり、夜は寝付きが悪くなったりと色々と体調不良を起こすようになりました。
結婚を前提として付き合っていた彼氏と別れたのですから、そうしたことが影響して身体に変化が起きたのかもしれません。
そんなある日、Aさんは流行り目にかかって一週間ほど自宅療養をしなければならなくなりました。
Aさんは一週間自宅にいたこともあって、その間に仕事のことをあれこれと考えたそうです。
今の仕事を続けていて本当にいいのだろうか?やりがいのある仕事は他にあるのではないか?そう考えるようになりました。
そして、出てきた答えが、思い切って退職するという選択でした。
こうして看護師を続けていくイメージができなくなったことや、今の職場ではやりがいが見いだせなかったというのが主な理由でした。
Aさんは、退職したい旨を職場に伝えることにしました。
最初に相談したのは病棟師長でしたが、師長はAさんが結婚を考えていた彼氏と別れていたことを知っていましたから、そのせいで体調不良を起こしていたのでは?とAさんのことを心配していたのでした。
また、Aさんがまだ若いこともあり、いろんな可能性があるのだから仕事も自分が思うようにやりなさいと背中を押してくれたそうです。
その後は、事務長や看護部長への報告なども師長が一緒に付き添ってくれたことで、思ったよりもスムーズに話がまとまり、Aさんは希望通り退職することができました。
退職してからAさんは、一旦実家に戻って体調を整えながら次の転職先を探しはじめました。
学校を出た時のAさんは、小児科か整形外科のどちらを希望するか迷っていたこともありました。
ですから、成人を経験するならぜひ整形外科を担当してみたいと思っていました。
Aさんは、とりあえず住みたい地域のエリアに整形外科がある病院を探すことにしました。
そのために看護師サイトで情報を集めたり、実際に病院のホームページを見たり、Aさんと同じように転職した友人たちにも相談に乗ってもらいました。看護師サイトでは、登録しなくても求人情報を見ることができるサイトを探しました。
ちょうど気になっていた病院に、同じ看護学校出身の同級生がいて、その病院の情報を教えてもらったことから、その病院に面接に行くことにしました。
その面接では、転職会社からではなく、自分でホームページから応募した形でした。面接をしてくれた看護部長はとても気さくな人だったことも好印象だったそうです。
その看護部長からの話では、Aさんが希望する整形外科病棟にちょうど欠員ができていて配属優先だったこと、スタッフの年齢層が同世代の人が多くて和気あいあいとした印象を持ったことなどが、その病院に決める理由になりました。
Aさんの転職先は、そうやって希望通りに整形外科のある混合病棟に決まりました。
まだ若い看護師なのに、転職が2度あることがAさんにとって当時はコンプレックスでしたが、思った以上に同じような経験をしている看護師が周りにもいて驚いたそうです。
また、小児科と整形外科だけでなく、さまざまな科を経験できたことで看護の幅が広がりました。
看護師の仕事は診療科によって視野が狭くなり、知識やスキルが偏ってしまいますが、Aさんはその点でもその職場での経験によって、広い視野で物事を見ることができるようになったといいます。
Aさんにとって、今回の転職の良かったところは、Aさんと同じ世代である20代後半から30代前半という年齢層が多く配属されている病棟だったこともあるでしょう。
また、Aさんと同じような中途採用のスタッフが多く、指導者として担当してくれた人も同じような経歴だったことなどから、Aさんが独り立ちするまでスムーズな流れで教えてもらうことができました。
また、その病院は整形外科の単科ではなく、泌尿器科、糖尿病科といった科がある混合病棟であり、成人病棟を多く経験したいと思っていたAさんにとっては、外科と内科の両方が経験できて勉強になったといいます。
小児科から成人病棟に変わり、対象年齢が違うことでケアの方法も違うことから、技術面や点滴留置など不慣れなこともありましたが、スキルアップにつながりました。
それと、新卒で入った病院の給与から比べると、月に5万円ほど高くなり、ボーナスも5ヶ月分出たことから年収は480万円くらいになりました。
さらに借り上げのアパートを安く借りることができ、しかも1LDKのきれいなアパートでとても住心地が良かったそうです。
また、Aさんにとって今回の転職で良くなかったことは、出身学校や病院がバラバラだったことで、それぞれの教育者の指導方法にバラツキがあったことでした。
ベテランの看護師が少なかったこともあり、病棟全体の知識スキルへの取り組みが弱いと思ったそうです。
そうした教育体制のバラツキやベテラン看護師がいないことから、数年したら学ぶものがなくなって見切りをつける人が出てきて辞めていく人も多かったといいます。
療養型病院から総合病院に転職したBさん
Bさんが療養型の病院に転職したきっかけになったのは、当時心身ともに体調をくずしていたことからでした。
そのことから、Bさんはもっとゆったりと仕事をしたいと考えるようになりました。そうした希望に該当する転職先は、患者さんの急変がほとんどなく、ほぼ定時に帰れる病院でした。
Bさんは、実際そんな希望通りの病院に転職することができ、ゆとりをもって仕事ができ、転職後の3年間で、心身ともに体調を回復させることができたといいます。
しかし、体調が回復したあと、それまではゆったりとしたルーチン業務に対して物足りなさを感じるようになりました。
Bさんにとって、同僚はみんな10歳以上も年上で、育児中の人や将来は海外移住を考えている人など、さまざまな事情をかかえて仕事と両立させている人たちばかりでした。
そんな同僚からは「20代からここでずっと働いていると、将来どこも働けなくなるよ」と言われることも多くなりました。
そんな話を聞くたびに、Bさんはもっと看護師としてバリバリ働きたいという思いが強くなり、転職を希望するようになりました。
そうして、Bさんは療養型病院から総合病院への転職を決意しましたが、その転職までにはさまざまな苦労がありました。
転職を決意したBさんは、まず転職の意思を師長に直接伝えました。
それまで、定期面談のときでもそうした退職の話は一切しなかったため、師長はびっくりして理由を聞いてきました。
それで、Bさんは具体的に言ったほうが良いと考え、「以前から興味がった糖尿病を極めたいから、糖尿病を専門とする病院に転職したい」と伝えました。Bさんは、そう伝えることで、「この病院では資格が取れないため、辞めざるを得ない」といった思いを分かってもらおうとしました。
しかし、その時に師長の返答は「基本的に結婚や引っ越しでないと、退職を認めることができません。看護師は募集したとしてもなかなか応募者もなく、補充がないかぎり退職は無理です」ということでした。
師長のその言葉を聞いたBさんは、強い反発を覚え、逆に退職する気持ちが強くなり、その日のうちに事務局に向かいました。そして、人事担当の人に直接「転職したいと師長に伝えたら引き止められました。
しかし、就業規則では3ヶ月前に退職の意思があれば大丈夫ですよね」と確認しました。
それを聞いた人事担当の人は、「就業規則からいえば可能ですが、退職するには師長の許可
が必要なため、こちらからは退職できますとはお伝えすることができません」と言われてしまいました。
Bさんは退職したいのにそれができない、相談したいと思っても誰も相談できない状況でした。
そんな中、Bさんは以前お世話になった転職サイトのことを思い出し、すぐにその場で転職サイトへの再登録を行いました。
登録後にすぐに電話があり、コンサルタントの方から「こうした時は次の職場を先に決めてしまうことで、辞めやすくなりますよ。
転職する意思が固いのであれば、先に転職先を決めてしまいましょう」と助言してくれました。
この言葉を聞いたBさんは、私には味方がいるから大丈夫。この転職はきっとうまくいくだろうと前向きな気持ちになれたそうです。
また、糖尿病を専門にした病院で働きたいといい気持ちとともに、糖尿病の認定看護師の資格を取得したいという気持ちも出てきました。
ですから、Bさんは糖尿病の認定看護師の資格をサポートしてくれる病院であることを、次の転職先の条件にしました。
コンサルタントの方はBさんの要望どおりの病院を探してくれ、数日後にはBさんの条件に合った病院を紹介してもらいました。
その病院は、認定看護師の資格取得のサポート以外に、寮の場所や立地条件も申し分ありませんでした。
それで、Bさんはその病院を第一候補とし、それを聞いたコンサルタントの方は素早い対応で、Bさんの休日に採用試験を受けることができるように病院側と調整をしてくれました。
そして、採用試験当日、Bさんは看護部長に「体調が回復した今、急性期の看護をどうしても勉強したいと思うようになり、この病院を希望しました。
ここでさまざまな看護を学び、最終的に認定看護師を取得してお役に立てるように頑張りたいと思います」と伝えました。
Bさんの思いを聞いた部長は「やる気があっていいね。あなたみたいな目標を持った人は絶対に伸びるから、ぜひ一緒に頑張りたい。
2回の転職があるのは気になるものの、何より今はとても元気そうだから問題ないわ」と言ってくれました。
そして、面接の場で内定を受けることができました。
新しい病院で内定をもらったBさんは、その翌日に再度師長への退職の申し入れをすることにしました。
「ここまでお世話になった御恩は本当に感じています。このような恩知らずな形になってしまったことは申し訳なく思います。
ただ、私にはどうしても叶えたい夢があります。その夢は残念ですが転職しなければ叶えられません。ですから転職させてください」と伝えました。
Bさんは以前のような伝え方ではなく、あくまえも退職をお願いすることに徹した伝え方をしました。
師長は最初、「そんなこといったって…」と困惑した表情を隠せませんでしたが、その後も2週間に渡って面接と話し合いを根気よく続けました。
Bさんによる説得が1ヶ月続いた結果、師長から退職することの許可を出してもらうことができました。
Bさんが転職して感じたことは、療養型の病院は比較的におおらかな人が多く、仕事もゆったりとしたやり方でした。
一方、急性期の病院では、スピードが求められる職場であり、その分テキパキと動く人が多くいます。
Bさんも転職してしばらくは、「療養型から来た人だから全体的に仕事のスピードが遅い」とよく怒られたといいます。
そして、Bさんにとって経験したことのない診療科へ転職したことで、一から勉強をし直さなければならないことが多く、遅くまで残って勉強するといった毎日でした。
そんな日々が続いたことは、Bさんにとって精神的にもかなりきつかったのですが、それでも、自分の夢を叶えるための第一歩だという気持ちで、歯を食いしばって耐えることができたそうです。
今回のBさんの転職は、病院の種類を変えたことだけでなく、これまで経験したことのない診療科に転職したという2つの変化を体験しています。
それらに適応できるようになるまで、多くの努力が必要でしたが、なんとか乗り越えることができました。
Bさんの転職に関して、良かったことと悪かったことをまとめてみると、良かったことはBさんが「糖尿病の認定看護師になる」という夢を叶えるために、どんなに厳しくても毎日勉強できたことでした。
また、転職先では認定看護師を取得する前段階として、院内認定制度があったことや糖尿病認定看護師を取得している人と一緒に仕事をすることができたことです。
Bさんは、そのことで自分が学びたいと思っていた糖尿病看護を十分に学ぶことができました。
それから、前の職場ではBさん以外の仲間が10歳以上も年齢が上で、どちらかといえば指導される立場でした。
そんなこともあって、どうしてもその立場に甘えてしまい、分からないことがあれば質問すればいいといった考えに固執していました。
転職後は、自分よりも年下の看護師も多く、業務に慣れてくると後輩への指導をする機会も与えられました。
後輩への指導によって、自分に足りない知識や技術を改めて感じることもでき、転職によってこうした機会を与えられたことはとてもよかったとBさんはいいます。
転職して悪かったことはあまりなかったそうですが、強いていえば同じ経験年数や年齢であっても給料や待遇に差があったことを知ったことでした。
20代で2回の転職を経験したBさんは、同じ経験年数の人とここまで差がついてしまったのかと、ショックを受けたことも正直あったそうです。
それでも、さまざまな機会を与えてくれたことでBさんにとって、転職したことは良かったと今でも思っているそうです。